M1"opening"
時の流れを緩めるようにゆったりとアコギとストリングスが絡み合い、その静かな波がこれから始まるファンタジックな体験を予感させるプロローグ。
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M2"写真"
冒頭、「なくしたもの全て教えて」とうたうあたたかな歌が、いきなり心の芯に寄り添ってくる。「君がいたこの世界は いつも悲しくて嬉しくて/君のためになくしても構わないから 涙に変えられない」など、孤独や悲しみを柔らかな光へと変える成山の作詞の素晴らしさが存分に発揮された名曲。原曲に比べてベーシックな流れがストリングスに委ねられ、穏やかな波のようにじんわりとからだの深部に浸透する楽曲になっている。4thAL『fantasia』収録曲。
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M3"夢の花"
2ndAL『traveling fair』収録曲。随所にポロンッポロンッと差し込まれる弦の音と、成山独特のリズム感を持つ歌の絡みが心地よく、まさに夢の世界へ誘う仕上がりに。深々と降り落ちる雪原のような空気を感じさせた原曲に比べ、春に草木が息吹くような温もり溢れる楽曲になっているのが印象的。
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M4"inside"
同じく2ndAL『traveling fair』収録曲。原曲は焦燥感を煽るリズムと不穏なギター音で氷の世界に閉じ込められたかのような雰囲気を宿すこの楽曲。削ぎ落とされた音で構成するアコースティックセットの張りつめた緊張感が、儚さを抱いた繊細な美しさを際立たせる。このアルバム中、最も「息をひそめて聴いてしまう」楽曲。
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M5"メリーゴーランド"
誰の上にも等しく眩しい光を注ぐようなメロディが素晴らしい、sleepy.abの代表曲といえる楽曲。山内のカリンバからこぼれ落ちる驚くほどクルンと丸い音の雫が、朝焼けに舞い落ちた霧雨のように心を潤してくれる。原曲の光に向かって舞い上がる華やかなテイストもいいが、そっと手を取って歌われているような素朴で親密な歌の優しさは、静かな涙を誘う。4thAL『fantasia』収録曲。
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M6"only in dreams"
2ndAL『traveling fair』に収録されるも、「キーボードを弾きながら歌えない」という極めてシンプルな理由から今までライヴで演奏されることのなかった幻の1曲が遂に披露。情感豊かに壮大な景色を描き出すストリングスの調べと、ポロンポロンと温かなリズムを感じさせる鍵盤の可愛らしい音色がファンタジックな世界を現出させている。原曲と聴き比べると、その印象の違いに驚くのでは。楽曲が新たな生命を吹き込まれて生まれ変わる、アコースティックverの醍醐味が発揮された1曲。
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M7"まっくら森の歌"
1980年代半ばから「みんなのうた」でOAされ、密かに人気を博した谷山浩子・作詞作曲の歌。幼い頃から大好きで、いつかsleepy.abでカヴァーしてみたいと話していた成山の念願が叶って実現したスペシャルな1曲。恐ろしいはずの「闇」の中にも美しいものや大切なものがあることをさり気なく伝える楽曲は、sleepy.abの世界観と見事にシンクロしている。触れたと思ったらスッと遠のいていく、絶妙な距離感を持った厳かで幻想的な成山の歌が素晴らしい。
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M8"arcadia"
山内のマジカルなオートハープの音色と荘厳な曲線を描くストリングスの調べが「ここではないどこか」を感じさせる幻想的な空間を作り出す。少しずつ「君」の存在を赦し光を帯びていきながら、ラスト「君の意味が生まれる世界へ」と歌われる――その完璧に包まれるような幸福感は見事。4thAL『fantasia』収録曲。
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M9"雪中花"
2008年初頭にリリースされたAL『archive』に収録された、結成10年を経たsleepy.abが次に向かう第一歩となった楽曲。エレクトロニカの繊細な音色で札幌の独特の温度感を表していた原曲に比べ、こちらは彼らの人と成りに触れるような、とてもあたたかで優しいテイストに。柔らかなストリングスの音色と歌が安らかな光で空間を包み、最高の余韻を演出している。
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