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"「Mother Goose」"
PCCA.03352/¥2,500(税抜価格¥2,381)
PONY CANYON
2011.02.23 out !!
○ SELF LINER NOTES / ○ interview
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SELF LINER NOTES |
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01. 街
山内のインストありきだったのですが、その時点で凄く雰囲気があったので、そのまま上にメロディをつけました。
今回のアルバムでは山内インストからの作曲パターンが多いんですが、これが上手くはまった最初のきっかけですね。
歌詞的には日常や周りは変わり続ける、それでも “自分はそのままでもいいと思う”って事をテーマにしました。凄く僕ららしさが出せた曲なので、アルバムの1曲目にできた事が嬉しいです。 (成山)
最初のきっかけは、三つ又のボッコ手袋の衝撃を題材に(詳細は本人に直接お尋ねください)フレーズ構築していきました、最終的には、函館の西部地区のレトロな風景のような、不思議なまったり感をサウンドに落とし込む事を意識して作りました。( 山内)
02. ドングリ
この曲は散歩の曲です。ただ歩きつつも、自分の内側から、外側や周囲や背景から、色々なものを受け止めながら歩く。
懐かしく思ったり、せつなくなったり、今日夜は何を食べようか悩んだり。。凄く自然に光を多く感じる曲ができました。
仮タイトルのままドングリです。それ以上に強い言葉が思いつきませんでした。(成山)
アルバムごとに新しい試みをする、というのが制作する際の目標なので、ポップなリズムパターンを基本にしてみました。
元々は跳ねたリズム、ハーフタイムシャッフルだったのですが、アレンジが進むうちにこのようなパターンになりました。軽くスネました。(津波)
03. 君と背景
メジャー1st シングルという事で張り切って光量を多くしました。笑
今のところこれ以上ポップには作れないかなと思ってます。 ベース田中のコードモチーフがあってメロディを素直に乗せました。
この曲の歌詞はM1街と同じ日常を繰り返すというテーマで始めたのですが、結果入り口は同じで出口が違う内容になりました。
常々変わりたいし、ずっと変わりたくないとも思っているんだ、というのがこの2曲から出た答えです。
北海道もようやく雪が溶けて春になってきた頃に作曲してました。周りも新しい場所に向かう季節で自分達も未来の自分へと期待を乗せた曲です。(成山)
僕達初のシングル曲ということで、今までの曲よりも詞のシチュエーションをより身近に感じてもらえるような表現で挑戦し、sleepy.ab という世界をたくさんの方に共有してもらいたいなと願いを込めた作品です。(田中)
04. マザーグース
山内ってたまにこういう曲つくるんですよね、妙に男らしいというか哀愁というか。 笑
サウンド的には意外とこういう事やってなかったんだなって思いました。普通にやった事がsleepy.ab にとっては斬新に聴こえる結果になりました。(成山)
大自然の中マンモスが走り回っているのをイメージしてサウンドを作りました、なので仮タイトルはマンモスでした。
音の躍動感を意識して作りました。(こっそり入っているギターで録音した鐘の音がマンモスの雄叫びです)( 山内)
05. かくれんぼ
2nd シングル。君と背景で開いたんで、閉じておこうかなと。次は、らしさや自分達のテンポ感の曲をやりたいなと思ってました。
サウンド・イメージは冬の中の暖かさ。北海道って外は寒いけど家の中が暖かい。暖炉に暖まってるみたいな。それって凄く北海道っぽいなって。
歌詞は、過去の自分に向けたものでもあります。あの時こう言って欲しかったんだな、逃げても良かったんだなって。逃げる事が出来ないと隠れるんだなって。(成山)
浮遊感というものについて考えました。ディレイ、リバーブは勿論ですが、ポルタメント、デチューン的な要素で今まで以上の浮遊感というものにトライしてみました。( 山内)
06.Maggot Brain
ざわざわした狂気の世界。怖い怪物が出てくる絵本みたいな。sleepy.ab のレンジの逆にあるダークサイド。
この一面もやっぱりこのバンドの性格なんだなと思います。(成山)
アルバムに欠かせない、ダークサイドな1 曲です。リニアドラミングというリズムパターンを取り入れました。
tower of power でお馴染みのファンキーなリズムなんですが、とてもヘビーな楽曲になりました、ライブ映えしますね。
咆哮するギターからイメージして、仮タイトルはゴジラと呼んでいました。(津波)
07. エトピリカ
道東や北方領土に生息してる貴重な鳥です。根室のおみやげさんには、幸せを呼ぶ鳥としてキーホルダーとかが売っています。日常のささやかな願いを込めた曲。
ちなみに本物のエトピリカは見たことはありません。(成山)
08. シエスタ
毎回ですが、レコーディングも後半に行けば行くほどサウンドも実験的になり、歌詞的にもフィクション性、創造性が増していきます。
制作終盤は歌詞合宿で札幌を離れてたりが多かったので、夜な夜な札幌の天気予報を調べて感傷に浸っていました。
そんな心象風景が、いつのまにかヨーロッパの街並みにまで飛躍してました。
それほど追い詰められてたという。。好きです札幌。(成山)
アルバム製作作業がピークの時に作っていて、今サボッたら、こんな事しよう!という妄想を音にしました。鉄琴やピアノいれてみたり、アコギをヘンテコな音にしてみたり、ドラムがおもちゃっぽかったり、いい意味で力を抜いて作った曲だと思います。( 山内)
09.way home
サウンドがノスタルジックで、まずはじめに実家の駅から家までの道を思いだしました。喪失と再生をイメージしています。
人は帰る場所さえあれば、また一からでも始められると思います。(成山)
故郷を思い浮かべながらアンデス(鍵盤笛)を吹きました。アレンジが進むにつれて煮詰まった頃に、オタマトーン息抜きで入れたら意外と良かったのでそのまま採用にしました。
ツアー中に全員でコーラスを録ったのが楽しかったです!( 山内)
10 トラベラー
近未来SF なイメージ。レトロでドラマチックな仕上がり。何か大胆で、新しいような古いような不思議な曲。
sleepy.ab にとっての新機軸となる作品。(成山)
宅録によるデータの受け渡しによって、ギターの音色や詞の世界観がどんどん成長して、当初のデモの雰囲気から、違う世界へ旅に出て帰ってきた曲です( 笑)。
バンド・マジックという言葉を改めて感じることが出来たし、ライブでのお客さんの反応も楽しみな曲です。(田中)
11 夢織り唄
今回のアルバムの歌詞の描写について、生々しさだったり、暖かさを表現するための寂しさだったり、言葉の温度感を意識して考えました。” 君と僕は似ているね”という言葉が出てきた時、凄くらしくていい言葉だなと思いました。サウンドはクラシカルでどこか懐かしくて安心感があるので子守歌みたいです。(成山)
サウンド的には、壊れて捨てられた、おもちゃが一人で遊んでいるイメージで作りました。
間奏、後奏のギターが、このアルバムの中で一番、イメージと音が一致した音色が出来たなと思っています。ギターっぽくないですが。(山内)
12. アルフヘイム
.ac ツアーの会場だったプラネタリウムやクラシックホールを思い浮かべながら作りました。星が雪のように降ってきたら、という妄想を自分なりに音にしてみました。オートハープの演奏や、歌、ストリングス、ギターを、それぞれ四声でアレンジするのに苦労しました。(山内)
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interview |
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sleepy.abが「大人のための寓話集」をあなたに捧げる--。
どこまでも時間軸がフラットになる。眠りの世界と現実のあいだをたゆたいながら、かけがえのない感覚を覚える。
それは、記憶のなかでひっそりと命脈をつないできた風景や感情に触れるように懐かしく、愛おしい。
厳寒を体感し、冬眠に入り、やがて地上の光を浴びる動物の感覚はこのようなものかもしれない、と思う。
その過程においては、時に悪夢も見るが、それもまた生々しい潜在意識の表れとして、深い場所に突き刺さる。
北海道から、リスナー一人ひとりのもとへ--。
sleepy.abの音楽は、そうやってすべてのリスナーと密やかで、濃厚なコミュニケーションを交わす。
そんな彼らの類例なき音楽世界は、もともと特別なポピュラリティを得る可能性を秘めているのだが、
前作『paratroop』から1年3ヶ月ぶりのアルバムとなる本作『Mother Goose』は、まさにsleepy.abの奥深い普遍性が開放された作品となった。
キャリア初のシングルでありバンドのポップネスを極めた"君と背景"、転じて深淵な歌の響きを重んじた2枚目のシングル"かくれんぼ"
を含む全12曲。繊細なソングライティングと凛としたサウンドスケープをさらに豊かにし、多彩な楽曲の物語を紡ぎながら、
ひとつの作品集を築き上げている。全曲の作詞とほぼすべての作曲にも関わっている、ヴォーカル&ギターの成山剛は語る。
「sleepy.abというバンドのコンセプトって、バンド名がバンド名だけに一度聴いただけでも伝わりやすいとは思うんです。
ただ、そこから偏ったイメージ--例えば癒し的な部分などがひとり歩きしてしまうこともあるなと思っていて。
そういう偏ったイメージをもたれている表現って、あまり深く触れなくてもいいと思われる危険性があるなと思うんですよね。
前作『paratroop』もいろんなアプローチをしてはいたんですけど、コンセプチュアルな作品を強く意識したアルバムでもあったので。
統一感を優先していたから、振り幅は小さかったなと思うんです。
今回はまず、バンドの振り幅を出しながら、聴く人の生活の一部になるような音楽を作りたいと思いました。
例えば朝、学校や会社に行くときにこのアルバムを聴いていたらふと『あ、今日ずる休みしちゃおうかな』とか、
『このままどこかに行っちゃおうかな』とか、そんなふうに思ってもらうのもいいかなと思っていて。
リスナーの『ポジティヴな逃避行』の手助けをするような伝わり方も素敵だなって思いますね」
"君と背景"や"かくれんぼ"を筆頭に、"街"、"ドングリ"、"way home"、"夢織り歌"など成山の私小説的でありながら、
誰しもの感性と呼応するような筆力を感じさせる曲が本作の中核を担っている。
その上でsleeby.abのダークサイド=「暗黒系」と呼ばれる系譜の"Maggot Brain"、妄想世界へトリップするような"シエスタ"や"トラベラー"といった楽曲たちがコントラストをつけるように存在している。
「"Maggot Brain"のような暗黒系もsleeby.abに欠かせない一部で。
この曲の歌詞は制作に追い込まれて、精神的にキツい状態がそのまま表れていますね(笑)。
"シエスタ"や"トラベラー"の歌詞は制作の後半に書いたんですけど、歌詞がフィクションに寄っているのは、
その時期に妄想のなかへトラベルすることで安息を得ていたんだと思います(笑)。
そういう曲が結果的にアルバムの振り幅を担っているのが、おもしろいですね」
1曲1曲、独立した物語としてのサウンドスケープを現出させるアレンジはどのように創造していったのか。
アルバム1枚を通してサウンド・プロデュースをギターの山内憲介が担いながら、作曲クレジットには成山と連名で各メンバーの名が
バランスよく記されている。
「今回はそれぞれのメンバーが作ってくる曲に僕が参加するような感じがあって。
いちばん最初に"街"という曲ができたんですけど、この曲は最初に山内がインストを作ってきたんです。
僕はそのインストの状態でもすごく気に入っていたんですけど、自分で何気ない感じで言葉とメロディをつけたらそれがすごくフィットして、
曲の魅力がさらに増したんです。そこからひとつの形ができて。ほかの曲もその方法論に沿ってできたものが多いですね。
あと、"シエスタ"や"トラベラー"はメンバー間でデータのやり取りをしながら作りました。
音楽で遊ぶ童心のような感覚をいつも大切にしたいと思っています。
山内のプロデュースで、これまでよりもアルバムの全体像を見据えた音の色づけをしている感じが強まっていますね、
それが作品の統一感になっていると思います」
そのなかにあって、アルバム・タイトルも導いたM4"マザーグース"は、ロック・バンド然としたシンプルなバンド力学のなかから生まれた楽曲であり、それがメンバーにとっては新鮮でもあったという。
その新鮮味がまたアルバムの世界観を象徴する歌詞も引き寄せた。
〈マザー・グース〉とは、イギリスにおいて有名な伝承童謡の総称であると同時に、その〈マザー・グース〉を創作したとされる不特定の田舎の女性作家たちのことを指す。
「"マザーグース"という曲ができたときに、アルバムの1曲1曲が一つひとつの物語であり、
アルバム全体として「童謡集」や「おとぎ話集」のようになるイメージが広がったんです。子どもが唄う歌なのに、
そこにはすごく深い切なさや怖さ、深い意味が潜んでいるような。童謡ってそういう歌が多かったりするし、グリム童話とかもそうですよね。
このアルバムの世界観もそういうムードがあると思うんです」
永遠に語り継がれる童話やおとぎ話のように、間口(作品のポピュラリティ)は大きく開かれていて、奥行き(受け手の感じ方)は無尽蔵。
そんな『Mother Goose』の特質は、sleepy.abというバンドの本質でもある。
インタビュー:三宅正一
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